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心臓MRI検査 ―心臓の構造を正確にしらべ病態の解明を目指す― 心臓MRI検査 ―心臓の構造を正確にしらべ病態の解明を目指す―

Ⅰ. 心臓MRI検査ってなに?

こんにちは。仙台循環器病センター循環器内科の肥田親彦と申します。本コンテンツでは、心臓のMRI検査についてお話しします。なお、宮城県成人病予防協会では、健康診断のための脳MRI検査も実施しております。ご興味のある方は、総合健診センターをご参照ください。

※MRI検査とは、磁気共鳴画像(MagneticResonanceImaging)の略称で、ラジオの電波、および強力な磁力をつかった検査です。からだの柔らかい部分―たとえば筋肉など―の、詳細な病変を検出することができます。その原理は、電波と磁力をつかって、からだに存在する水素原子を動かすことにあります。下の図のように、体内の水素原子は、もともと色んな方向を向いていますが、電波と磁力をつかうと、すべての水素原子を同じ方向に向かせることができます。

そのあと、これらの水素原子は自然に元の方向に向き直っていきますが、その「向き直りの速さや方向」が、からだの部位によってまちまちなのです。MRI検査とは、その水素原子が向き直っていく様子を画像化したものなのです。

ⅰ)仙台循環器病センターが注力する心臓MRI検査

当院では、心エコー図検査や心臓カテーテル検査、心筋シンチグラフィ検査といった、心臓病に関するさまざまな専門的検査をおこなっています。

現在、仙台循環器病センターでは、あらたな事業のひとつとして、『心臓MRI検査』に力を注いでいます。心臓MRI検査は、解析装置の整備や、装置をあつかえる専門スタッフが少ないことなどから、その実施施設の数は多くはありませんでした。ですが、心臓の状態を高精度にしらべられる利点があることから、欧米を中心に普及化していきました。
仙台循環器病センターでも2017年から心臓MRI検査を本格的に導入し、患者さん方のさまざまな心臓病のしくみの解明に役立てています。


グラフ:心臓MRI検査件数

ⅱ)心臓MRI検査の特徴は?

欧米において、心臓MRI検査は『オール・イン・ワン』と呼ばれています。これは、ひとつの検査で非常におおくの情報を得ることができるために名づけられた呼称なのです。

以下に、心臓MRI検査の特徴をあげてみましょう。

1)放射線の被曝がない

MRI検査の最大の特長のひとつですが、その原理上、CT検査やレントゲン写真、カテーテル検査のような放射線の被ばくは生じません。とくに若い女性の患者さんの場合は、放射線の被ばくがないことは、大きな利点といえます。

※日本における医療上の放射線検査は、健康に害をきたさない安全基準の範囲内でおこなわれていますが、それでも被ばく量を最小限にとどめるに越したことはありません。

2) 明瞭な画像が得られる

実際の心臓MRI検査の画像はこちらになります。

非常に明瞭に、からだの内部が映し出されていますね。このようなクリアな画像が得られることは、診断の精度にも大きくつながるのです。

3) 心臓の筋肉(心筋)の性状を評価できる

さて、みなさんは『心不全パンデミック』という言葉をご存じでしょうか。


グラフ:心不全症例の新規発症人数

日本が高齢社会になり、『心不全』とよばれる疾患群が増加してきているのがわかります。
(引用:ShimokawaH,etal.EurJHeartFail.2015Sep;17(9):884-92を一部改変)

心不全とは、なんらかの理由で心臓の筋肉、つまり心筋のうごきがわるくなり、全身の血のめぐりが悪化してしまう状態のことを指します。こうした心不全の原因をしらべるにあたり、心筋のダメージを把握しながら治療方針をたてることが重要です。
実は、心筋のダメージをもっとも鮮明にうつしだす検査が、心臓MRI検査なのです。それは、MRIという装置の仕組みが、筋肉というやわらかい組織の内部構造を把握するのにもっとも適しているからです。
心臓病のなかには、炎症によって心筋が徐々によわまっていくようなものあります。そのような場合、MRIを用いて炎症の範囲やひろがり方を把握することができれば、より適切な治療方針を立てられるでしょう。
そのほか、心臓MRI検査は客観性にすぐれていたり、いままで計測がむずかしかった『右心室』の評価が可能になるなど、現在もっとも注目をされている検査法なのです。

ⅲ)検査の時の注意点

  • MRIの検査中、からだを動かしてしまうと画像にブレが生じてしまい、正確な検査ができなくなります。
  • 検査時間は約1時間かかります。検査の途中でトイレに行くことはできませんので、あらかじめ用便を済ませていただきます。
  • 検査にかかる費用は、およそ7,640円です(2019年時点:3割負担額。施設のMRIの種類によっても異なります)。
  • 原則的にはMRI用の造影剤を用いて検査をおこないます。※

※ 気管支喘息をお持ちの方は、造影剤による副作用がおこりうるため、造影剤を使わずに検査を実施します。そのため、検査の実施項目が減り、通常よりも心臓病についての精度が低下してしまう場合があります。

Ⅱ.心臓MRI検査をうけるには?

心臓MRI検査は、なんらかの心疾患がうたがわれる患者さんであれば、全例が適応になります。

ⅰ)とくに心臓MRI検査がすすめられる病気は?

まず、心筋症の患者さんが心臓MRI検査の適応になります。
「なぜか心臓の筋肉がバテている」というのが心筋症ですが、その原因をしらべるにあたり、MRIで心筋そのものがどうなっているのかを評価できれば、それに合った薬剤をえらぶことができます。
このことは、診断と治療方針を立てるうえで大きな一助となるはずです。

つぎに、若い女性の患者さんも心臓MRI検査が適応されるでしょう。さきほどの「放射線被ばくがない」でも触れましたが、放射線被ばくは発がん率、および胎児にも影響する大事な要素です。若い女性の方ほど、MRIでの検査を考慮するべきだとおもわれます。

ⅱ)心臓MRI検査の実施がむずかしい対象は?

MRIは、直径70センチメートルのせまい管内に寝そべって施行されます。

したがって、閉所恐怖症の方にとっては実施がむずかしいでしょう。
また、体内に金属のある患者さんは、MRIに対応した金属かどうか、かならずチェックが必要になります。そのほか、検査技師からの指示にしたがうことのできない方、体動をおさえられない方も、検査の実施は困難です。詳細はこちらにまとめてみましたので、気になる方は確認してみてください。

MRI検査の禁忌

Ⅲ.まとめ

本コンテンツでは、心臓MRI検査についての概要をおつたえしました。気になる方、検査をご希望の方は、仙台循環器病センターの循環器内科外来でお気軽にご相談ください。

  • 仙台循環器病センターは、心臓MRI検査に注力している施設で、心臓病についての精密検査をおこなうことができます。
  • 心臓MRI検査は、放射線の被ばく量がゼロであり、若い女性の方でも実施が可能です。
  • 心筋の炎症の分布を把握しながら、適切な治療方針を立てることができます。
  • 心臓MRI検査の適応、および注意点があり、事前の確認が必要です。